富山県から長野県までつながる山岳観光ルート「立山黒部アルペンルート」の最高地点を貫く立山トンネルでは、国内でここだけにしかない「トロリーバス」の運行が2024年度をもって終了します。
25年から「電気バス」に転換
運行事業者の立山黒部貫光(本社:富山市)が明らかにしたものです。標高2,000mを超えるルート最高地点の室堂駅から大観峰駅まで、長さ3.7kmの区間のトロリーバスについて、2025年4月からは車両に備えた蓄電器に充電して走行する「電気バス」へと変更する計画を立てています。
トロリーバスの運行ルートには電気を流した架線が張られています。バスは車体の屋根から上空に突き出した「トロリーポール」と呼ばれる装置を通して電気を集め、モーターの動力として活用します。日本の法律上は鉄道に分類され、レールのない電車を表す「無軌条電車」という呼称で取り扱われます。
北アルプス立山を貫くアルペンルートの最後の開通区間である立山トンネルは、1966年(昭和41年)の着工から約5年の歳月をかけて完成しました。当初はディーゼルバスで運行していましたが、全区間が国立公園内のトンネルであることを考慮し、1996年(平成8年)4月に排気ガスの出ないトロリーバスへと転換されました。
ちなみに、同じアルペンルート上では、関西電力が黒部ダム駅〜扇沢駅間の「関電トンネル」で1964年(昭和39年)からトロリーバスを運行していました。“先輩”に習って立山トンネルもトロリーバス化しましたが、関電は2019年4月から電気バスでの運行に切り替え、以後は立山トンネルが日本に現存する唯一のトロリーバスとなっています。
(立山トンネルトロリーバスの仕様、沿革、立山黒部アルペンルートの全体図など詳細は下の図表を参照)
もう期待できないトロリーバスの技術革新
28年間で累計1920万人以上に利用されてきたという立山トンネルトロリーバスですが、車両の更新期を迎え、運行システム維持の是非についても検討が行われました。立山黒部貫光は、高地における安定走行性が優れ、今後も一層の技術革新が見込まれる分野であることも加味して電気バスの導入を決めたと説明しています。
路面電車に準ずる候補として比較的安価に導入できたトロリーバスは、かつて東京や京都などの主要都市で日常の輸送を担っていました。しかし、ほかの交通機関への転換が進むにつれ運用箇所が希少化し、これ以上の技術の進歩やコストの低廉化は見込めない状況です。山岳地帯に位置することもあり、部品の確保や修理が難しくなってきていることも決断の背景にあると見られます。
立山黒部貫光は2023年11月30日(木)付で、立山トンネルのトロリーバス事業を2024年12月1日をもって廃止する旨の届出を国土交通省北陸信越運輸局へと提出しました。また、国立公園事業であることから環境省の手続きにも従い、環境負荷の軽減に留意しながら転換を進めます。
いよいよ日本から姿を消すトロリーバス。最終運行となる2024年度のアルペンルートでは、ラストイヤーを記念したイベントの実施などを企画していくとのことです。
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